化粧文化研究者ネットワーク 第75回研究会報告
テーマ:武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園見学と講演
講演タイトル:「人間の嗅覚の多様性と化粧文化の変遷を考える」
講師:市邊 昌史 氏(一般社団法人 インターナショナル・セラピストユニオン (IUNT)代表理事)
日時:2026年9月17日 (木) 13時30分~16時30分
会場:武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
形式:対面

2026年9月17日(木)、武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園にて、第75回化粧文化研究者ネットワーク研究会を開催した。ぐずついた天候が続く中、この日は天候に恵まれ、関東・関西から16名が参加した。研究会は、市邊先生による講演、武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園 スタッフ 坪田 勝次さんによる植物園紹介、そして植物園見学の三部構成で行われた。
第一部では、市邊 昌史 先生より、「人間の嗅覚の多様性と化粧文化の変遷を考える」をテーマにご講演いただいた。先生は、香りを単なる化学物質としてではなく、「身体」「記憶」「文化」が重なり合って認識されるものとして捉える視点を提示された。私たちは何で香りを感じているのか。身体で嗅いでいるのか、記憶で嗅いでいるのか、文化で嗅いでいるのか。こうした問いが参加者に投げかけられ、香りと化粧文化を考える奥深さに触れる機会となった。
第二部では、武田薬品工業株式会社 坪田さんより京都薬用植物園の概要をご紹介いただいた。同園は1933年創設、約3,100種の植物を保有し、そのうち約2,000種が薬用植物である。植物遺伝資源の保存にとどまらず、「守る・つなぐ・伝える」をキーワードに、生物多様性保全や文化財保護、伝統植物の継承など、多様な活動に取り組まれていることが紹介された。植物園を単なる展示施設ではなく、社会・文化・教育・研究をつなぐ場として位置付ける考え方は大変印象的であった。
第三部では、坪田さんのご案内で京都薬用植物園を見学した。約9万4千平方メートル、東京ドーム約2個分という広大な敷地には、熱帯・亜熱帯植物の温室、香辛料園、漢方処方園などが広がり、参加者は実際に植物に触れ、香りを確かめながら学ぶ貴重な機会を得た。
なかでも印象深かったのは、坪田さんのご専門であるバニラについてのお話である。温室にはキュアリングされたバニラビーンズの甘く豊かな香りが漂い、参加者は香料として身近な存在であるバニラの奥深い世界に引き込まれた。アイスクリームや菓子の香りとして知られる一方で、植物としての生態や栽培の難しさ、普及にかける思いなどが熱く語られ、その情熱が強く伝わってきた。全国へバニラ栽培を広げたいという取り組みからも、植物を未来へつなごうとする姿勢を感じることができた。
市邊先生の講演で示された「問いを立てる」という視点を胸に、参加者それぞれが植物の香りや姿から新たな発見を得た一日となった。香りから広がる文化の世界、人と植物との関係、生物多様性の価値について改めて考える機会となり、研究と文化、自然と社会をつなぐ化粧文化研究者ネットワークらしい研究会であった。
なお、次回研究会は11月29日(日) 東京で開催予定である。今回参加された方々はもちろん、初めての方にもぜひご参加いただき、共に新たな問いと発見を楽しんでいただきたい。

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