化粧文化研究者ネットワーク 第71回研究会報告
- kaogakunlcollab
- 7 日前
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テーマ:「ホーユーヘアカラーミュージアム見学会」
■日時:2025年9月16日(火)13時30分~15時
■見学先:ホーユーヘアカラーミュージアム
■住所:愛知県 名古屋市 東区 徳川町903
今回はホーユーヘアカラーミュージアムのご協力で、化粧文化研究者ネットワーク会員向け見学会を組んでいただきました。また、希望者のみ、第二部として2024年夏から試験販売を開始しているLUCENA cosme tattoo(注)の担当者のお二人、藤井淳さん、山口真吾さんよりセミナー形式でお話をうかがった後、実際に体験をしました。
ホーユーヘアカラーミュージアムは、2023年にホーユー株式会社の100周年を記念して開館した日本初のヘアカラーに特化した博物館です。今年春には、せたがや文化財団生活工房と共催で「ヘアカラー展 なぜ染める、なぜ染まる。」展を催しています。館内でも説明されていますが、この企画展では、目的や仕上がりによって4タイプの製品(ヘアカラー、ヘアマニキュア、カラートリートメント、ブリーチ)にわかれ、その特徴、製品の歴史をわかりやすく展示されていました。この企画展から、ホーユーの本社近くにヘアカラーミュージアムがあることがわかり、初の名古屋での研究会開催へとつながりました。
今回は、ミュージアムに集合後、館長の梶原秀一さん、OBの中園陽久さんのご案内で、参加者は二手にわかれてご案内いただきました。私の組では、2階の日本のヘアカラーの歴史が学べるブースから見学スタートです。日本では、もともと毛染め剤は黒油や金属酸化を用いたものでしたが、明治時代にヨーロッパから化学染料で染める技法が入ったのち、過酸化水素を用いる毛染め剤が定着しました。現在も基本的にはこの技術を用いつつ、髪を傷めず、素早く染める技術を追究している、というのが大まかなヘアカラー開発史です。1990年代以降は、髪の明るさを分ける基準となるレベルスケールが開発されたことで、職場や業種に合わせたカラー染めが可能になり、グラデーションをつけるウィービングやホイルワークなどのテクニックの導入など、さまざまなエポックな出来事があったことがわかりました。
体感エリアに入り、スタッフさんによる毛髪表面観察、AIによる髪型や髪色を大胆に変えるアレンジ提案シミュレーター、パーソナルカラー診断などを体験できました。薬剤の違いによる髪の染まり方が理解できる装置などもあり、ヘアカラーの色の変化をさまざまに楽しめるソフトなども。
さらに、3階に赴くとホーユー株式会社の歩みをたどることができました。看板やパッケージなどの展示品は、すでに社内にないものもあり、日本各地の薬局や蔵などから集めながら展示しているそうです。
第2部は、事前に会から寄せた質問に対して、藤井さん、山口さんが回答されました。
ASEANでの活動経験が長い藤井さんが、日本でもヘナやジャグアのようなボディメイク、シール式のフェイクタトゥーが定着しつつあることを踏まえ、社内ベンチャー制度にヘアカラーの技術を生かしたティント式タトゥー開発を応募したそうです。ミレニアム世代以下はタトゥーに寛容である一方で、タトゥーを入れた人の58.8%が後悔しているという自社のアンケート結果などをもとに、「消える」ことを前提とした新たな身体装飾の選択肢として開発しました。現在6色発売されていて、混ぜて好きな色をつくることもでき、別売のパターンを購入して自分で描けて、冷蔵が不要という特徴があるそうです。現状、反応がよいのは世代問わずおしゃれに敏感な人たちで、中でも特に美容専門学校の学生は反応が良く、ネット経由の販売のほか、ネイルサロンへの販路開拓を検証しているそうです。
セミナー終了後に、体験した世話人たちは歓声をあげ、おそろいの「タトゥー」を撮影してSNSに挙げるなど、早速「Tattoo is not Taboo」の世界を楽しみました。
今回は、ヘアカラーの歴史と文化というテーマについて深く知ることのできた研究会でした。そして、化粧品開発に携わっている方からお話をうかがう機会は少ないので、非常に貴重な機会となりました。さらに、セミナーを通して、一つの商品が売り出されるまでには、研究、商品開発、販促、広報宣伝など、細かい点にまで神経をはりめぐらせる過程があることに改めて気づかされました。
(山本芳美)
(注)自分好みに色付けができる日本の化粧品では初の肌を彩るティント式タトゥー。肌のターンオーバーによって、約5日で薄くなって消える。


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