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日本顔学会関⻄支部 第5回研究会

2025年8月25日(月)、大阪工業大学にて日本顔学会関西支部第5回研究会を開催し、50名を超える皆様にご参加いただきました。今回は、日本顔学会を牽引されている3名の先生方によるご講演に続き、「顔学研究の未来」をテーマとしたパネルディスカッションを行いました。


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まず、日本顔学会副会長であり早稲田大学先進理工学部教授の森島繁生先生より、「バーチャルヒューマン研究の未来予報図」と題してご講演をいただきました。フォトリアルな顔CG動画像制作における近年の代表的な技術をご紹介いただき、顔写真一枚から生成されたリアルな動画像や、多視点から俯瞰可能な三次元復元のデモンストレーションには、会場から驚きの声が上がりました。森島研究室の豊富な実績を基盤としつつ、世界的な研究動向を交えた内容は、飛躍的な技術の進展と新しい時代の到来を実感させるものでした。


続いて、甲南女子大学人間科学部教授の米澤泉先生より「スマホ時代の顔と化粧文化」と題してご講演いただきました。顔学会30周年記念シンポジウムで開催された「未来の顔コンペティション」のグランプリ作品にも触れながら、顔に対する価値観の変遷と、これから好まれる「顔」の在り方についてお話しいただきました。個人のアイデンティティとしての「顔」だけでなく、状況や役割に応じた“分人”としての顔の概念が注目されていること、さらに顔を自己のアイデンティティと結びつけない考え方が、顔を隠すアーティストの登場や個性を目立たせないメイクの流行につながっているという興味深い視点をご提示いただきました。


三人目として、関西学院大学工学部特任助教の都賀美有紀先生より「感性研究と顔学~個人差に基づく価値創造~」と題してご講演いただきました。都賀先生の所属される感性価値創造インスティチュートでは、感性価値の探求を通じて、商品開発における高付加価値化やウェルビーイングの向上、社会的ロスの低減を目指す研究が進められているとのことでした。化粧水の触感や拭き取り感が心地よさと使用満足度に影響するという研究成果に加え、価値観が多様化する現代社会における「顔の多様性」の重要性や、好みに応じた最適化の可能性について、非常に示唆に富むご提言をいただきました。


今回の研究会では、技術・文化・感性という異なる軸から「顔」を問い直す視点が交差し、顔学の新たな可能性と広がりを実感する機会となりました。「顔」は、生体情報であり、社会的記号であり、そして感性価値を創造する媒介でもあります。デジタルとリアルが交錯する現代において、私たちはどのような「顔」とともに生きていくのか――その問いは、研究者だけでなく、社会全体に開かれた問いでもあります。


これからも関西支部では、分野横断的な対話と研究交流を通じて、顔学の新たな地平を切り拓いていきたいと思います。ご参加・ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。(日本顔学会関西支部 支部長 瀨尾昌孝)

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