■講演者:計良 宏文 (資生堂チーフアーティスティックディレクター/SABFA校長)
■日 時:2023年12月16日(土)
■会 場:(株)資生堂汐留オフィス
風を孕む真っ白なドレスをまとい強いまなざしを向ける女性、フィギュアかと見まごうアイドル、人工的な被り物を嫌う俳優のために人毛でつくった天守閣型のカツラ、文楽人形のカシラ、生け花とヘアメイクを融合させた“人花一体”かのような作品、現代美術アーティストの作品とのコラボレーション、ランウェイを彩るヘア・メイク、、、。こう書き出してみると、バラエティ豊かなフィールドが並んでいることに驚かされる。これらはすべて計良さんが手がけたお仕事の一端である。この広範なクリエイティビティはアート界でも注目され、公立美術館で初となるヘア・メイクアップアーティストの個展「May I Start? 計良宏文の越境するヘアメイク」(2019埼玉県立近代美術館)として開催された。研究会では、作品の紹介とともに計良さんのクリエイションの背景と考え方をご紹介いただいた。
話は、計良さんのルーツから始まる。計良さんのご出身地、佐渡島は日本海に囲まれ、能や鬼太鼓など伝統芸能が息づく地。海や岩礁のモノクロームの世界に指色が印象的に映える風景を目にしてきた。ご自身の美意識のルーツにはこれらが影響している、と言う。ヘアメイクへの関心が芽生えたのは高校生時代。ロックバンドを組んでいて、ライブでビジュアル系バンドをまねてヘアスタイルをつくることが楽しかったという。またお姉さんが美容の道に進んでいたことも影響したそうだ。
美容専門学校に進学し、卒業後に資生堂に入社。直営サロンでの活動を経て、化粧品ブランドの広告を担当するヘアメイクアップアーティストとして活躍の場を広げていく。広告撮影の現場、商品の使用性や効果的な使い方の研究、それらを伝える美容情報の作成にと多忙を極めた。先輩諸氏からの薫陶や社内外との仕事の経験は、計良さんのクリエイションの姿勢や表現に深く結びついていく。
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