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第64回研究会「観相学・骨相学から顔学へ。人類(と私)の顔研究の歴史を振り返る。 」

■議題:観相学・骨相学から顔学へ。人類(と私)の顔研究の歴史を振り返る。


■講演者:池袋 絵意知 氏(顔研究家)


■日時:2023年9月19日(火)


■会場:大阪樟蔭女子大学小阪キャンパス


 今回は,2000年代の日本顔学会イベントに最も多く参加した男(自称)である顔研究家の池袋絵意知氏のご登壇でした。会社員をしていた頃からの、自身の顔の変化を写真とともに紹介するところからご講演は始まりました。ここでは,さまざまな人たちとの交流の中で「顔の特徴や雰囲気によって性格の傾向があるのでは?」と感じたことが顔研究を始めるきっかけとなったことや,研究を進める中で入会した日本顔学会のイベント,またそこで出会った方々などが豊富なエピソードとともに紹介されました。


 また,19世紀欧州の骨相学が“顔研究の黒歴史”として取り上げられました。骨相学は人の性質が頭蓋骨の大きさや形でわかるとした疑似科学の一種で,かつては人間を差別するための根拠ともなり,特に犯罪者に共通の骨の特徴が調べられたことでも知られています。さらに,近年米国の大学が「ある人物が犯罪者になりうるかどうかを予測する顔認識プログラム」を開発した事例が紹介され,現代においても顔を研究対象とすることで起こりうる問題があることが指摘されました(この研究は多くの研究者の批判を受け,最終的に論文掲載は見送られました)。

 

 池袋氏は人を外見で評価することの必然性と危うさに留意し,観相学を基調としながらもより時代に即した処世術として「顔面観相術」を探究してこられました。現在では「顔は変えられる。顔は持ち主である自分から愛されることで美しく変わっていく」という考えから「顔創道」の確立を目指していらっしゃるとのこと。これは,個性を尊重し,美しさが本質的に多様であることを示すとともに,外見を過剰に意識するルッキズムへの一つの回答となるものだと思います。この「自ら顔を創ることによって自らの人間性を善くする」顔創道を極め・広めることが,池袋氏のライフワークとなるのではないでしょうか。

 

 講演後の質疑応答では「究極の顔」に関する問答も紹介されました。「究極の味などありはしない もしあるとすれば健康と空腹」という言葉を受けて発した池袋氏の「究極の顔とは?」という問いに,本研究会の北山代表が即座に「健康と自信」とお答えになったというものです。まさに至言といえるのではないでしょうか。


 本研究会は,楽しい話題とともに顔の研究に関わる問題も提起され,顔や化粧の研究者である私たちに,改めて顔を研究することの面白さと難しさについて考える機会をくださった貴重なご講演でした。





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