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「怒りと恐怖の表情をめぐって」

第55回顔学オンラインサロン

2024年3月5日(火)

話題提供者:桐田隆博氏(岩手県立大学社会福祉学部教授)


顔学オンラインサロンでは,話題提供に岩手県立大学の桐田隆博教授をお迎えして,怒

りと恐怖の表情に関する心理学の研究の展開をご説明いただき,その後,ご参加の先生を

交えてのディスカッションを行いました。

話題提供者の桐田先生からは,顔表情の認識仮定についてお話しいただきました。普遍

的な表情とされる顔表情には,幸福・悲しみ・怒り・恐怖・嫌悪・驚きの表情の6つのカ

テゴリーがあり,それらは,普遍的に表出され認識されると考えられてきました。これら

の顔表情の中でも桐田先生は,検出が早いと認識も早くなるはずであるにもかかわらず,

怒りや恐怖の表情に対する認識が遅く不正確であるという矛盾を突破すべく,国内外の研

究の展開を批判的に検討されてこられました。

桐田先生の話題には,表情の進化,表情の優位性など様々な話題が含まれました。特に

,怒り顔は大人顔に近づき,恐怖顔は赤ちゃんの顔に近づくという点が印象的でした。こ

れに関連して,恐怖と怒りの表情は接近と回避を誘発するという意味で対他的機能があり

,嫌悪と恐怖の表情は情報を拒絶するか取り入れるかという意味で対自的機能があるとい

う点もとても興味深く感じました。

ディスカッションでは,心理学の観点から,阿部会長から進化心理学に基づくコメント

として,感情の一番初めは嫌悪だったのではないかと考えられていることが示されました

。中嶋先生からは,表情筋を持たない動物は感情表出における顔面表情の役割が少ないと

いう定説があるにもかかわらず,ラットが他個体の痛みを感じている表情を認知できる可

能性があるというコメントをいただきました。これも定説を覆す新たな観点であり,大変

興味深いテーマといえそうです。他にも,齊藤先生から似顔絵を描く際には,怒りと恐怖

の表情は基本的に描き分けていないというコメントをいただき,心理学以外の実践的な分

野での表情の扱いについても関心が高まりました。

今回のオンラインサロンは,少し難しいテーマであったにもかかわらず,桐田教授の熱

心で丁寧なご説明のおかげでとても楽しく深く学べる有意義な回となりました。

記:木戸彩恵



 

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武庫川女子大学薬学部

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